laid back

ほかから移ってきました。日々、思うところ感じるところを気ままにつらつらと。

「お水の世界」。

賭博行為を禁止していながら換金が常識なパチンコ店が至る所で営業し、売春を禁止しておきながら本番行為が当たり前な風俗店が少なくないこの国。

 裏と表。

 本音と建前の国ニッポン。

 いろいろありますが、考えようによってはなんだかとっても面白い。

 善し悪しの問題ではなくて。

 まぁ、いいんだか悪いんだかよく分かりませ〜ん、が。。。

 どんなに正論を主張しようが、それがすんなり通らないのが世の常。とはいえ、考え方はいろいろなので、一方からそう見える「差別」というものはなかなかなくならない。

 なくなるどころか、それが「自然な状態」として常識化することすらある。

 例えば、「お水の世界」。

 もちろん、「水商売」からの派生語。異論もあるでしょうが、「お水」という言葉を尊敬の眼差しを持って使っている人々はそれほど多くはないでしょう。差別感情など感じないくらい当たり前の言葉になっているけど、どこかで「下」に見ている自分がいませんか?

 っと、長々と書いてきたんですが、まぁ、そうしたことはこの際どうでもいいんです(^_^;)。


 1冊の本を紹介したいだけなんです、実は。


 古くて恐縮ですが、都立水商!小学館文庫)



 

 「東京・新宿は歌舞伎町に設置された水商売について学ぶ学校「東京都立水商業高等学校」を舞台にした学園コメディである。水商開校10年後、家業の書店を継ぐために教師をやめることになった田辺圭介が、10年間と開校準備の2年間で起こった出来事を回想するというストーリー。」(※ウィキペディアより)

 ↑そんな内容です。

 先日のブログで紹介した『史上最強の内閣』の著者室積光の出世作。漫画にもなりテレビドラマにもなったので、知っている方々も少なくないかもしれません。ワタクシは今回初めて知ったんですが(^_^;)。

 ストーリー設定から展開まで、とにかく面白い。

 だって、現実ではある意味おおかた「特別な人たちの職業」と見られている「お水の世界」を正面から取り上げ、生徒たちが、目指すべき職業として真面目に勉学に励むんですから。所詮は小説の世界で全くのフィクションなのに、すごくリアリティがあって、時に感動すらしてしまった(^_^;)。

 例えば、こんな場面に。

 都立の普通高校の校長から初代校長に就任した厳格な人物だという矢倉茂夫が、全職員の前でこう挨拶する。

 「矢倉です、よろしく。皆さんの中には、私がこの水商業高校の初代校長に選ばれたことを不思議に思われている方もおありでしょう。私は、山形県の豚小屋で生まれました。
 実は両親が旅芸人でしてね。私はその巡業先で生まれたわけでして。母が芸者をしていたんです。父は母のいた芸者置屋の番頭のようなことをやっていたようです。
 中学2年の時に東京の伯父に引き取られて、大学まで行かせてもらいました。それで何とか教職につくことができたわけです。両親の元にいたら、私の人生はまったく違ったものになっていたでしょう。ですから、中学までのワタシの記憶をたどりますと、水商売の華やかさも哀しさも両方心に残ってるんです。
 幼い私にお菓子をくれた女性たちは、今思えば春をひさいでいたんでしょう。まだあどけない表情の残る人たちでした。私を実家に残した弟のように思ってくれたのかもしれません。私は、夜の仕事に従事する人々の素顔の温もりの中で育ったわけです。」




 「奇想天外」な話のオンパレードではあるんですが、所々、こうした感動するような話や場面が盛り込まれている。

 かといって、この本を読んだからといって、「お水の世界」に対するあなたの「偏見」(抱いている場合は!)が改まり、「差別」がなくなるわけでは決してありません!!

 そんなの当たり前なんですが。

 まっ、とにかく面白い、ということです。

 興味があれば、読んでみてくださいな〜。