期待される娘。
「ほほう、そうですか。へぇ、秋田から来られましたか」
3月末、4年間過ごした秋田市を離れ、本社のある仙台市に戻ってきた。
この4月から小学6年生になる娘の編入手続きで、妻と娘が新しく通うこ
とになる小学校にあいさつに行くと、先生方から口々にそう言われたという。
転勤族が少ない仙台近郊の住宅地。少子化で各学年2クラス程度しかない
小規模な小学校に、普段からあまり多くはない転校生が新しく入ってくるとい
うので、先生方はわが子を期待して待っていた。
妻いわく、「秋田から来たことを話したら、気のせいかもしれないけど、なんと
なく、先生たちの目がキラッと光って興味津々って感じだったわ」。
後日、その小学校の先生と顔見知りの父母がこんなことを話していた。
「○○先生ね、○○ちゃん(うちの娘)のこと、『頭が良くてしっかりしているお
子さんですねぇ』って言ってたわよ」。先生たちは「さすが」とも口にしていたと
いう。
娘と妻、3人で大いに笑ってしまった。「そんなアホな」。
何かと後ろ向きな話題が多かった秋田を離れてみて、初めて県外の好反響
のすごさに直接触れた感じだった。
お分かりでしょうか?秋田は昨年まで、小中学生の全国学力テストで3年連
続トップクラスの好成績を挙げ、『秋田方式』が全国の教育関係者の間で注
目されてきました。当然、その〝薫陶〟をもろに受けたわが娘。本人の実力
と思いなんかに全く関係なく、新しい先生方は勝手に期待しちゃったんですね。
「まぁ、人間そう簡単に期待されないもんだから、注目されてることを励み
に前向きに頑張れば」
妻と2人、笑いながら娘を励ました。
「いい迷惑だよぉ」と娘は口をとがらしたけど、新しい学校での生活を今か今
かと心待ちにしている。そこの学校では、転校生は全校集会で1人ひとり挨拶
することになっているので、そのことだけが目下の悩みのタネなんだとか。
そこで、挨拶の出だしを娘に提案してみた。
「秋田から来ました○○です。よろしくお願いします。みんなの期待にはまず
応えられませんが、明るく元気に、楽しい学校生活を送りたいです....」
明日8日、娘の小学校の新学期が始まる。