サンタの贈り物。

　2年前、秋田市の小学校で吹奏楽部に入った現在6年生の女の子が、その年のクリスマス、秘密を打ち明けるように、父親にこう話したという。
　「今年はサンタさんにフルートを頼むんだ」。
　女の子の無邪気な願いに、サンタさんはフルートの代わりに別のプレゼントを贈り、こうメッセージを添えた。
　「メリークリスマス！　フルートは残念ながら今年は届けることはできないな。君が毎日フルートを頑張って練習したなら、いつか願いはかなうよ」。予想外の高価な贈り物を求められ、サンタさんもかなり必死だったらしい。
　今年4月、仙台に戻り12歳の誕生日を迎えたその女の子は、遠慮がちながらもしっかりとした声で、父親にこう訴えた。
　「パパ、ちゃんと続けるからフルート買ってちょうだい！」
　引くに引けない状況に追い込まれた父親は、「いいよ」と涼しい顔で答えたものの、母親が手配して購入したピッカピカのフルートを眩しそうに見つめながら、添付された請求書の額をあらためて確認し、ため息ともつかぬ声を押し殺してつぶやいた。
　「俺がこれまで買ったことのあるサーフボードより数倍も高いじゃないか」
　父親は翌日、長期ローンを組んで緊急事態に対応したという。