laid back

ほかから移ってきました。日々、思うところ感じるところを気ままにつらつらと。

ルポ 大津波、街消えた

 巨大な津波が、船を、車を、住宅をのみ込んだ。街が消えた。家々がなすすべもなく燃え続けた。11日、国内で観測史上最大マグニチュード(M)8・8の地震が東北を襲った。突き上げる揺れ、牙をむき迫り来る海。東北は恐怖に震えた。

 宮城県南三陸町の高台にある志津川高に避難した。海と街を見た。
 午後3時35分ごろ、海の奥が白く波立ち、遠くで大型の漁船が流された。

 直後だ。町の中心部を南北に貫く新井田川沿いで、土煙が上がった。川を逆流した津波が、住宅を押しつぶした土煙だ。

 堤防を乗り越えた津波が、川沿いの建物を次々と襲った。瞬く間に50〜60軒がなぎ倒された。

 周囲には避難住民約200人がいた。若い女性2人が抱きつき、泣きだした。あちこちから「キャー」という悲鳴が上がる。「なんで、どうして」。あまりの光景に、言葉がつながらない。

 新井田川からあふれた津波と、海から押し寄せた津波が一つと化し、町を西へ向かった。津波の高さは2階建ての町役場より高い。10メートル以上はあった。3棟ある町役場のうち木造2棟を押し流し、鉄筋コンクリートの防災庁舎ものみ込んだ。

 防災庁舎の屋上には、避難した職員とみられる30人ほどの姿があった。津波が屋上をたたいた。しばらく立ちこめる水煙。数分後、屋上が見えた。そこにいたのは10人ほどになっていた。

 防災庁舎の屋上にある高さ5メートルほどの無線アンテナによじ登り、津波を逃れた人もいた。

 津波は、海岸線から約2キロ離れた志津川高がある山の麓まで達した。山にぶつかってさらに北に向かった。

 町から建物の姿は、ほぼ消えていた。(河北新報社志津川支局・渡辺龍)



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 仙台市中心部から国道4号を南下した。名取市の境、名取大橋を渡ると、無残な光景が広がった。数え切れない住宅が、がれきと化していた。

 名取川河口から逆流した茶色い津波が、家々を押し流した。上空からヘリコプターがサーチライトを照らし、取り残された人を捜す。遠くで、赤い炎が夕空を不気味に染める。住宅が燃えているようだ。津波が消防車などの行く手を阻む。

 近くの会社員渡辺昭さん(54)は「河口から一直線に津波が来た。3人ぐらいが流されているのを見たが、救助されたようだ。火災の方向に自宅がある。心配だ」。赤く染まる空を見詰めた。(河北新報社スポーツ部・原口靖志)

【写真説明】避難場所の小学校で校庭に座り込む人たち=11日午後7時20分ごろ、仙台市青葉区の東二番丁小