laid back

ほかから移ってきました。日々、思うところ感じるところを気ままにつらつらと。

夢のあとさき。

 「夢なのよ、きっと。早く覚めてほしい」

 今回の震災で酷く辛い目に遭った若い主婦は、あるボランティアの世話役の男性に、こう話しているのだという。

 想像を絶するような出来事に遭遇してしまった時、人は記憶を失ってしまうのかもしれない。認めたくない、受け入れられないという拒絶感が、そんな意識にさせてしまうのだろう。

 この女性のような被災者が、今、各地の被災地に数多く存在しているはずだ。

 むごく、悲しいことに、夢は必ず覚める。生きている限り。

 昨日、震災後初めて、ずっと会えずにいた友人を訪ねた。波の音が聞こえるぐらい海のそばに住んでいた彼は、家族全員が無事だったが、家ごとすべて津波に流された。

 彼は幸いにも、仕事があり、間借りの一軒家を確保した。生まれ故郷の地域は、すべての家が流され、亡くなった人たちもいたという。彼の仮住まいの家は現在、25世帯の拠点となり、それぞれの仲間たちから物資が届けられていた。遅ればせながら、この日自分も考えられるだけの物資を彼の家に届けた。

 「怖くて、(身も心も)崩れそうで、まだ、実家を見に行っていないのよ。何もかもがなくなってしまったし........」

 すっかり憔悴しきった様子の彼の妻は、言葉少なにそう話した。

 辛く、厳しい現実に、「これが夢であったら....」と、被災者たちは誰もそう思っているだろう。

 物資は何とか揃えることができるが、抱えてしまった心の闇は、当の本人にさえ見ることができず、前に踏み出す一歩の重みはそれぞれに違うのだ。

 幸せな位置にいる自分ができることは何だろう。

 彼の家族には、「いつでも見守っているからな」という安心感を抱いてもらうことぐらいしかできない。

 震災から2週間が経ち、「夢から覚めた後」の状況と対策を真剣に考えなくてはいけない時期にきているのだと思う。