laid back

ほかから移ってきました。日々、思うところ感じるところを気ままにつらつらと。

就活中の彼女。

 知り合いの大学3年生の女子が、こう話していた。

 「自分が本当にやりたいことがよく分からないんです。『それじゃ、いけないよ』とか『やりたいことを必死に探さないとダメじゃない』とか、大人の方たちからよく言われるんですが、それが分かれば...ふぅ...」

 就職活動を始めたばかりの彼女。どうやら、いきなりつまずいているようだ。

 「ある資格を持っていて、それを生かした職種に就こうと考えているんですが、(別の大人から)『本当にそれでいいの?』って言われたりして、何だかもう...」

 たいへんですね、本当に。

 今は就職氷河期ですから、なおのこと。

 自分がやりたい仕事を、職業選択の過程の中で具体的に描くことができると断言する学生ってどれほどいるんだろうか?

 彼女の話を聞きながら、そんな事を思った。

 そして、自分が好きな事や得意な事、やりたいと思っていたことを実際に自分の職業とした人たちってどれほどいるんだろうか?とも思った。

 プロスポーツ選手になりたいと憧れても、それを果たすことができる人々はほとんどいない。大半の学生にとっての就活は、それに似ていないだろうか?

 希望通りの職業に就くことができた人の方が、そうじゃない人より少ないのが現実では?

 しかし大人たちは、しばしば若者たちに向かってこういうことを言いたがる。

 「夢を、目標を、しっかり持たないといけないんだよ」と。

 そう言われ続ける彼女のような若者たちは、その言葉に焦り、不安を抱いてしまう。

 確かに、夢や目標はしっかり持ったほうが、いい加減に持つよりいいかとは思う。でも、夢や目標を持たないことは間違ったことではない。持てない場合も現実的にある。そういう指摘が彼女たち、彼たちの耳に届くことはあまりない。彼女以外の就活中の学生さんたちと話をしていてそう感じる。

 目標通りに就職活動を達成させた数々の〝成功体験〟が、就活市場で幅を利かせているからかもしれない。「勝ち組」と「負け組」という単純な図式で就職活動を〝受験戦争〟と同じ論理で語る口調がより説得力を持っているからなのかもしれない。

 若い時分(時に若いとも限らないが)、自分の将来に不安を感じない人は滅多にいない。

 彼女が悩むのは当然だし、悩みぬいて自分なりの答えを出すべきだとは思う。

 ただ、「夢を、目標を、しっかり持たないといけないんだよ」という類の声に、必要以上に敏感になる必要はない。それを思い悩んだとしても容易に答えは出ないだろうし、答えを出せない自分を責め立てれば、どんどんマイナスのスパイラルに心が支配されてしまう。

 「どんな些細な、どんな小さなことでもいいと思う。自分のいいところを見つめ直し、まずは自分でそれを評価してみたらどう?興味のあることも考えて。一つ一つ見ていけば、いいんじゃないの?」

 彼女には、そう話した。アドバイスと呼ぶには当たり前すぎる話で、何もインパクトがなく、答にさえなっていないことは承知の上。もっとも、答えがあるかどうかなんて、社会人20数年の自分でさえ分からない。

 実は彼女、自分をあまりにも過小評価しすぎていると思う。知り合ってそれほど時間が経っていないので、正確に彼女を把握していないのかもしれないが、少なくとも知り合いの同年代女子学生の中では最も礼儀正しく優しい、周囲を思いやれる女性なんです。

 それを彼女は気付いていない。自覚していない。もしかしたら、長所だと思っていない。

 すごく繊細な性格なんでしょう。思い悩むタイプなんでしょう。だから、周囲の大人たちが言うことに、逐一反応してしまうのでしょう。

 〝外野の意見や指摘〟にはほどほどに耳を傾け、自分にとって都合のいいように物事を考えてみるのも、彼女の場合はいいのかもしれない。

 もっと自分自身に自信を持てばいいのに。

 自分で自分を認めることから始めたらいいのに。

 否定から始めるのではなく、肯定から始める。

 そうすれば、きっと何かが見つかると思う。きっと。

 来年の今ごろには、彼女からいい知らせが届いているだろうか...。

 就活中のほかの学生さんたちも無理しない程度に頑張ってくださいませ