laid back

ほかから移ってきました。日々、思うところ感じるところを気ままにつらつらと。

小さなリベンジ。

 朝晩、キンモクセイの甘い香りがかすかに鼻孔を突く季節になった。

 季節は廻ってあれからまた秋。1年が経つんだなぁ。

 1年前、娘を珍しく強い口調で叱った。

 フルートのソロコンテストに出場し、本選で明らかに不甲斐ない演奏を披露した彼女。緊張とかプレッシャーにあまり強くないタイプだから、本番で怖気づいたのだと思う。

 それは仕方がない。舞台慣れしていないのだから。

 責めたのは、その後の態度。受賞を逃した悔しさを微塵も見せず、何事もなかったようにケロッとした態度だった彼女に、オヤジは、無性に腹が立ってしまった。

 少人数の参加者が集まる小さなコンテストではあるが、ここを目標に頑張っている同じ年代の子どもたちがいて、実際、前日の予選では、落選した女の子がとても落胆した様子で涙を流していたのを見ていたからかもしれない。

 日頃から稽古をつけてくれている先生や伴奏を務めてくれた別な先生、アドバイスをくれたまた別な先生たちへの思いに至らない彼女の態度をとても寂しくも思った...。

 娘はその後、自分としては当時大きな目標としていたコンテストで東北大会への切符を取り逃し、相当に悔しい思いをしたらしい。小さな壁にぶつかった経験が重なった。

 いつだったか忘れたが、「同じソロコンテストに出場したい」と言われた。今年は高校受験生の身で、将来音楽の道に進むわけでもない彼女が出場しなくてはいけない立場にはなかった。

 でも、「どうしても出たい」と言われた。

 そう言われれば、快諾するしかない。けど、「大丈夫なんだろうか?」と多少心配する親心はあった。



 終わってみれば、そんなことは杞憂だった。

 先週初めから彼女は風邪をひいていて万全な状態ではなかった。それでも、一昨日の予選、昨日の本選とも堂々とした立ち居振る舞いと見事な演奏を披露し、目標をはるかに超える1位で中学生活最後の晴れ舞台を飾った。

 「良かったです。これで今日はぐっすり眠れます」

 喜びと安堵した様子でそう話した先生の言葉が印象的だった。

 娘もうっすらと涙を流し喜んでいた。


 この1年の彼女の努力を知っているだけに、こちらの喜びも大きい。

 頑張ったね。。。


 家に帰ってきた娘は、「これ、パパに」と言って、ふたつの祝儀袋をこちらに向けた。

 昨年と今年の副賞が入った祝儀袋だった。今年のはもちろん、昨年の袋も一度も開けていなかった。

 この1年、彼女なりにこれを考えていたんだろうな...。そう思うと、じ〜んとくるものがあった。


 本音を言えば、のどから手が出るほどほしかった現金ですが(^_^;)、それを悟られないよう平静を装いながら、「それは自分で好きに使ったらいいよ」と言って返した。


 小さな〝挫折の経験〟を、しっかり受け止めてきちんとその後の糧にした彼女の姿がまぶしかった。