laid back

ほかから移ってきました。日々、思うところ感じるところを気ままにつらつらと。

味日記/一休さん

 子どものころ、テレビアニメ「一休さん」が好きだった。
 毎回、毎回、難題をとんちで解決する丸坊主の一休さん。愛嬌ある人物像に、同年代だった少年はぞっこん参っていた。
 あれほど熱心に見た番組でも、ほとんど内容を忘れたが、1話だけしっかりと覚えている話がある。

 殿様だか大名だか、とにかく偉いお方に(進行上、殿様にしときます)、「この世で一番おいしい物が食べたい。用意しろ」と言われた一休さん

 お金と名声と権力、すべてを手にした殿様は、いつもおいしい物を食べていてそれにも飽きていた。「口にしたこともないほどおいしい食べ物を」と、我がまま放題、子どものような殿様の無理な要求に、一休さんは考えました。


 ポクポクポクポク....................。   チーン。


 朝、殿様を寺に呼び出し、自分たち坊主が日ごろ行っている床の雑巾がけや境内の掃き掃除をすべてやらせる。展開をハラハラどきどきで見守る和尚らの心配をよそに、

 「慌てな〜い、慌てな〜い。ひと休み、ひと休み」と一休さん

 汗だくになるぐらい、こき使うこと数時間。ピカピカに輝いた本堂で、一休さんが殿様に用意したのが、炊き立てのご飯と味噌汁、それにわずかのおかずだった(はず。メザシもあったかも)。

 ぶつくさ言いながらもすべての雑事をこなし腹ペコだった殿様は、目の前にある粗末な食事に文句ひとつ言わず、いや言う余裕もなく、がっついて食べ始めた。

 ひと口、ふた口、がむしゃらに食べ続けた殿様は、ひどく感動した。

「これほどおいしい朝ご飯は初めてだ」と言ったかどうかは定かでない。

 自ら汗を流して労働した後のご飯。これに勝るものはないと、日ごろからグルメ(あの時代にそんな言葉はなかっただろうが)を気取っていた殿様は悟った。

 飽食と甘えの時代。ベタですが、不必要な贅沢は本当の感動を抱かせないということを思い起こさせる。