laid back

ほかから移ってきました。日々、思うところ感じるところを気ままにつらつらと。

粋な言葉。

 フェラーリランボルギーニのような高級スポーツカーを見るたび、プロ野球東北楽天の主砲、山崎武司を思い出す。

 ファンには広く知られたことだが、車好きの彼は、実際にフェラーリを何台か所有している。普段乗っている車は確か、ベンツだった。多くの野球選手が乗っているベンツは、プロスポーツ選手というステータスシンボルであると同時に安全性から人気が高いのだとほかの選手が話していたことを覚えている。ドッかと体の大きい彼にはベンツがお似合いだが、やはり好みはフェラーリなんだと話していた。

 チーム創設1年目の時、楽天番記者をやっていた関係で、特に山崎とはよく言葉を交わした。野球のことよりもむしろ、マニアの間では有名なミニカーコレクターの横顔とかスポーツカーの魅力についてよく立ち話をした。

 車のことはあまり詳しくないので、もっぱら彼に教えられるように話は進むのだが、スポーツカーを語る時の山崎の無防備な表情に、「なんだか、いいなぁ」と思いながら聞いていた。ある時、フェラリーの魅力について熱く語っていた時の彼の言葉が今でも忘れられない。

 「そんな大きな体だったら、車体が低くて運転席も窮屈に感じるだろう。それでも、いいんだ、フェラリーは?」

 確かそんな自分の質問に、こう返してきた山崎。

 「いや、その窮屈さがいいんですよ、相原さん。ねっ、よく言うでしょう、『扱いにくい女ほどかわいい』って」

 文字にすると、とても平板になってしまうのだが、試合前のやや緊張感漂うベンチ前で、なんともニクイ言葉を捨て台詞のように言った山崎は、ちょっと照れた様子でバットを肩に担ぎながら打撃練習に向かって行った。

 参ったな。

 粋、なんだよなぁ。

 一歩間違えば気障に聞こえるセリフだったが、妙に納得してしまった。

 あの当時、チームの中で誰よりもプロを感じさせ、風格を漂わせていた山崎は、最年長ながら今なお活躍中。

 あっぱれ、たいしたもんだ。