laid back

ほかから移ってきました。日々、思うところ感じるところを気ままにつらつらと。

流儀。

 大学1年のころ、文字通り「足の踏み場がない」場面に出くわした。

 場所は、仲良くしてくれた先輩が当時住んでいた学生寮の自室。

 目を疑う光景だった。紙くず、カップめんの食いかす、雑誌、ちり紙....................。数え切れない種類のごみが、部屋中に広がり、10〜20センチほどにたまり、床が一切見えない。数着の洋服がかけられた小さな洋ダンスと、かすかに使用感を漂わせる机がなかったら、そこに住人がいようなどとはまず想像できなかった。

 元々のボディーの形状が分からないほどいたるところが凹んだシビックが先輩の車だった。車内もごみを散らかし放題。ドアを開けるのに、まずは足で蹴ってずれを調節し、やっとこさ座席に乗れたオールドカー。サーフルーフにボードを積み、壊れたラジカセから時折流れるボブ・マリーのレゲエを聴きながら、よく福島方面にサーフトリップに連れて行ってもらった。

 遠めからでもあまりに目立つので、誰もが振り向いた究極のポンコツだったな。

 そんな先輩と行動をともにしていて、ある時、気付いた。

 自分のごみは車の中に投げ捨てていたが、決して外に出さないことに。寮の中でも、それは同じだった。ごみが、部屋からあふれ出すことはなかった。

 主義主張などを一切口にしない人だったから本音は今もって知らない。身の回りを汚くしていても、他人の、公共の場を決して汚さないのが、彼なりの流儀だったのだと思う。

 見た目は確かに悪いけど、誰にも迷惑を掛けていない。時に彼は、道端や海岸に落ちているごみを当たり前のように拾って車の中に放り込んでいた。

 自分の身の回りだけをきれいに保ち、ごみをポイ捨てしている人を見るたびに、その先輩を思い出す。