クールダウン。

　小さいころから思ったことをそのまま口に出す性分なので、これまでに数え切れないほどの失敗を重ねてきた。

　「口は災いの元」。身をもって実感しております。はい。

　失敗も年齢も重ねてみるもので、思えば、以前よりは考えてから言葉を口に出すようになった。これでも。

　先日の朝。出勤前にこんなことがあった。

　職場に向かうべく車を出そうとしたら鍵がない。どこを探しても見当たらない。

　１時間前に家を出た妻が持っていってしまったのだ。自分用の鍵も一緒に。

　交通の便が極端に悪い住宅地に暮らしている。定刻まであと１時間。まずもって、怒り心頭に達した。

　「一体何を考えているんだ。あの〇×△■▽..............」。１人、罵詈雑言のオンパレード。こんな時に限って、妻は携帯に出ない。

　急ぎに急ぎまくり、何とかぎりぎりで会社に到着。依然、怒りは収まらなかったが、携帯は相変わらず通じない。またもや、１人悪口。

　なんやかやとあって、その日は仕事に追われ、そのうちその出来事さえ半ば忘れていた。昼過ぎ、コーヒーを飲んでいたらふと思い出した。が、不思議と怒りが収まっていた。

　考えてみた。振り返ってみた。想像してみた。

　結果、「まぁ、いいか」という結論に落ち着いた。

　そんなことが、最近続いている。

　相手に怒りを直接爆発させなかったことで、事が丸く収まっている場合が。

　若いころなら、こう思っていたに違いない。「どうして俺だけがこんな目に遭うのか」とか「悪いのは俺じゃなく、あいつだ」などと。

　今でもそう思うことはあるけど、少なくはなった。許容範囲が広くなってきたのか、はたまた所詮どうでもいいと思っていることに対してはなはだいい加減な態度になってきたのか、あるいは単に忘れっぽくなってきたのかは分からない。

　ただ、なんとなく心地いい。