laid back

ほかから移ってきました。日々、思うところ感じるところを気ままにつらつらと。

Vol.150 ドナドナの季節。

 今年も11月になった。

 中旬にもなれば、山々の紅葉はすっかり終わり、街には木枯らしが吹き、海の上には灰色がかった雲がかかることが多くなり、なんとなく憂鬱になる。この時期を、うちら夫婦は「ドナドナの季節」と呼んでいる。

 小学校のころ、音楽の授業で習った、あの「Dona Dona」を連想している。 1938年に発表されたイディッシュ語のこの曲は、牧場から市場へ売られていくかわいそうな子牛を歌っている。人間の子供を子牛に見立てた反戦歌という説もあるが、とにかく、暗い。低音が重く心に響き、作者の制作意図は分からないが、とにかく、ダメなんです。

 ドナドナに抱いた印象が、夫婦そろって、11月の典型的な東北の心象風景とぴったりと重なってしまっている。

 嫌な季節だ。

 面白いもので、以前この話を知人にしたら、その人は全く違った印象を曲から抱いていた。「暗さよりむしろ、明るく牧歌的な曲調」と言っていたから、全く逆の感想だ。曲の印象って、聴く人によってこれほど違うものなんですね。

 でも、11月の情景は変わらない。限りなく、ドナドナなのだ。

 だから毎年、次の12月を待ち望みながら11月を〝うっちゃる〟ようにしている。

 年に一度の楽しいクリスマスが控えている気ぜわしい師走が好きだ。好きなことを考えていれば、嫌なことは結構あっさりと忘れるものだ。