laid back

ほかから移ってきました。日々、思うところ感じるところを気ままにつらつらと。

距離感。

 「寄り添う」。

 震災以降、何度この言葉を聞いただろうか。

 自分も一度のみならず何度かこの言葉を口にし、文字にした。

 被災者の方々に対する思いとして。

 しかし、心の隅でかなり引っかかっていた。いや、実は今でも引っかかっている...。

 学生とのコラボで続けている「情報ボランティア@仙台」の活動や、管理している震災関連のSNSで、少なからずの被災者の方々と接し続けてきた。

 そうした歩みを振り返ると、正直、「寄り添う」などという言葉を安易に使った、あるいは使おうとしている自分に、とても引け目を感じてしまうのだ。

 上原隆さんの『喜びは悲しみのあとに』(幻冬舎アウトロー文庫)を読みながら、改めてその思いを強くした。

 市井の人々を、淡々とした筆致で描き、さらりと味わいのある余韻を漂わせる上原さんの文章には、書き手としての執拗なまでの取材が背景に隠されている。

 震災以降、数多くの文章を、主にブログとして書いてきたが、取材対象者と過ごした時間はほんのわずかの時間で、とてもじゃないが、「寄り添う」などというレベルではない。

 体裁としての「記事」は常に出来上がってきた。

 それはそれでいいのだが...。

 なんだか、モヤモヤしたものが心にずっとへばりついている。

 思えばそれは、何も震災後に限ったことではなく、取材する側に立った時から今まで20年以上ずっと抱え続けている自身の問題なのかもしれない。

 取材対象者との関係性に、「本当にこれでいいのだろうか?」と自問自答を繰り返しているわけ。その思いが、特に震災後に強くなり、現在に至っている。

 上原さんの本を読んでいると、「それで、あんたは(取材者として)何をやっているわけ?」と言われているような錯覚に陥る。

 難しいなぁ...。