laid back

ほかから移ってきました。日々、思うところ感じるところを気ままにつらつらと。

No.510 素直に喜べない.....。

 2020年の「東京五輪」が決まり、またひとつ、澱のような憂鬱な感情を改めて抱いている。

 この国の代表である安倍さんは、国際オリンピック委員会の総会でこう発言した

 「東京は世界で最も安全な都市の一つだ。それは今でも、2020年でも一緒だ。懸念を持つ人もいるだろうが、東京電力福島第1原発について私は皆さんに約束する。状況はコントロールされている。決して東京にダメージを与えない。オリンピックが安全に行われることを保証する。財政的にも整っている。

 開催地に東京を選べばオリンピックムーブメントに新たな強い息吹を吹き込むことになる。IOCと力を合わせ、世界をよりよい場所にしていこうと思っている。

 (汚染水問題は)結論から言って全く問題ない。事実を見てほしい。汚染水による影響は福島第1原発の港湾内の0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている。」

 先日も東京招致委員会の竹田恒和理事長が、「福島とは離れている。東京は安全だ」と発言し、東京電力福島第1原発事故に苦しむ福島県民たちから反発の声が起きたばかり。

 安倍さんの発言は、これと何ら変わりがない。

 要するに、東京が良ければそれでいいのである。「東京で潤い、その波及効果が東北などの地方都市に及べばいいなぁ〜」という感覚なんだろうと思う。

 1964年開催以来2度目の東京五輪を、前回と重ね合わせる経済人が多いようだが、「戦争からの復興」は全国民な関心だったが、「震災からの復興」はそうではない。

 2年半を迎えようとする今では、「風化した出来事」と感じている国民のほうが多いのではないか?

 五輪開催で経済が活性化し、各種スポーツ競技の向上が図られることを否定するつもりはない。

 「未来を担う子供たちのために夢と希望を与え、被災地の復興をさらに加速させていきます。」

 同じように「東京は安全」と繰り返していた東京知事の猪瀬さんは、今朝、このようなコメントを出した

 本当か?重箱の隅をつつくようで申し訳ないが、「被災地の復興をさらに加速させる」のは、東京都知事の直接的な仕事でも役割りでもない。上から目線のリップサービスと、「これは言っておいたほうがいいはずだ」との下心の配慮に聞こえしまう。

 開催決定を喜ぶのは勝手だが、汚染水問題の抜本的な解決は糸口すら見えず、復興は緒に就いたばかり。その間、原発を抱える電力各社は再稼働を目指し、政府はそれを容認するような動きを見せ、平和憲法を改正しようと画策し...。

 祝賀ムードの根底にあるのは、経済資本至上主義と保守主義なんだと思う。

 東日本大震災で停滞してしまったその方向性の実現を目指す動きが、東京五輪開催決定という〝浮かれた〟空気に乗って強まってくるのではないか?

 考えすぎ、ではないと思う。


 2020年まであと7年。震災後10年すらたたない。

 喜びの熱気に便乗した政治的な動きが、この間、静まることはないだろう。

 願わくば、関係者の皆さん方には、政治的にも経済的にも〝都合が悪いこと〟に蓋をせず、課題にまともとに取り組み、7年後の開催日には、世界各国から「あぁ、日本はこの日までにまともに取り組んできたんだなぁ」と称賛されるようであってほしい。つくづく、ホントに......。


 東京五輪開催が決まる2日前、思想家の内田樹さんはこうつづっている

 「東電と安倍政府がどれほど国際社会から信頼されていないか、私たちは知らされていない。
 汚染水の漏洩で海洋汚染が今も進行しているとき、世界の科学者の知恵を結集して対応策を講ずべきときに、日本政府は五輪招致と米軍のシリア攻撃への『理解をしめす』ことの方が優先順位の高い課題だと信じている。」

 喜んでばかりいるわけにはいかないだろう...。